6年前の春、僕はなぜかフランスの田舎で牛に餌をやっていました。
朝8時に仕事は始まって、家畜の餌やり当番がまわってきていた僕はまずミルクに飼料を混ぜた大きめのバケツを担いで豚のところに向かい、続いて柔らかめの雑草をけっこうな量刈ってうさぎにやりにいきます。順に鶏、ひよこ、鴨、、、牛。
広大な土地の中でいろいろな動物が飼育され、色々な野菜が栽培されているこの農場はノルマンディー地方のペルシュと言う場所にありました。
数ヶ月前からパリに滞在し、いわゆるヨーロピアンフラワーアレンジメントの勉強をしていたところ、流れでお世話になっていた花屋のオーナーの知り合いに有機農業の農場を運営する若い集団がいるとのことで、コンタクトをとり滞在させてもらっていました。
農業の経験や知識は全くなく、会話もままならないまま田舎の駅につきました。しばらくするとえらくヒゲをはやした年齢不詳の、表情のやわらかい方が迎えに来てくれました。
名前はセドリック。日本人にも親近感がある名前。
着いた農場は広大で、結局最後までどこまでがそこの農場なのか境界がかわかりませんでした。そして部屋など一通り案内してもらったところ、おや、この寒い中部屋に暖房がないしベッドには毛布1枚、トイレは便座の下にポリバケツがおいてありそしてお風呂が無い。バスタブが無いのではなくてシャワー室もありませんでした。
これから数ヶ月このブルディ二エールという農場での生活が始まりました。次回ここでの生活を紹介したいと思いますが、僕が日本で農業をしたいと思ったのは、ここの食べ物が感動するほど美味しかった! それが1番のきっかけです。
それだけかと思われた方もおられるでしょうが、感動するほど美味しい食べ物は日本にもあってまだ出会っていないか、普段の生活に埋もれ気づいていなかっただけなのかもしれません。
毎日の食事を”美味しく”摂ることは人生を明るくし、時間に彩りを与えてくれることをここで思い知らされました。
そんな食べ物を自分で作ってみたくなってしまったのです。
次回につづく