農園ブルディニエールの食材


今回は僕が農業を始めたきっかけとなったノルマンディーの農園での食事について書きたいと思います。

こちらの農園ではおそらく調味料以外の90%以上の食材が自給されていました。主食の穀物はもちろんパンですから小麦畑があり、毎日石の釜でパンを焼きます。そして乳牛が100頭くらいいたと思いますが、広大な牧草地に放してありそれらの牛からミルクを絞り牛乳、バター、チーズなどの乳製品を作ります。野菜は路地とビニールハウスがあり、多品目の野菜が栽培されていました。

あらゆる消費を抑え、生産にはげみ、自給しながら作物を売って生活することは消費税が19,6%と高く(食料品などは5,5%)社会保障がしっかりしている(イメージ)国においてある意味賢い生き方だと感じました。そして食料品と並んで税率が軽減されているものに農業用肥料、農薬があります。これは自国の農業や食を守るという意識が感じられます。

話はそれましたが、ここで重要なのはこれらの自給されている全ての食材が科学的な肥料や農薬を使用しない有機肥料を使ったものだったということです。このことが前回書いた人の排泄物が臭くない理由だと彼らは言っていました。牛の飼料はいくつかの圃場で自然に牧草を生やし、十分に成長した所へ順番に牛を入れ替えていきます。そして牛の糞を回収し堆肥になったものを畑に還しあらゆる作物を栽培します。

こうして動植物の生き死にが循環していく仕組みです。

このように生産された食材を使って摂る毎日の食事は本当に美味しく、食べ物で日常に彩りが出ることを思い知らされたのです。そしてこの生活を始め2、3週間したある日、体調の変化に気がつきました。

なんだか足が軽い!

そして体の気だるさがない、明日はどんなことにチャレンジしようかと頭が考えだす・・・

心身ともに軽快な感覚になり正体不明の生きる意欲みたいなものが体を覆い始めました。

思い返せばこのように感じたのはただ食べ物が美味しかっただけというわけではなく、こちらの農場でのいろいろな環境がそうさせたのだと今は思います。ただ人の体をつくる食べ物を生産するという過程や、また自分で作った作物を自分で食べるという動作がこうしたことの原因であることは間違いのないことでした。

この体験が僕にとって衝撃的で、これはやるしかないと。。。

こちらの農園は動物性堆肥での有機農業になりますが、現在僕の米作りは肥料を入れない無肥料栽培という方法にいきついていますのでこれが有機農業になるのかはわかりませんが、別の回で少しずつ紹介していきたいと思います。

そしてこちらの農場をあとにし、いったんパリへ戻り花の資格を取ったり、少し花の仕事に呼んでもらったりと残りのフランス滞在を有意義なものにし帰国しました。

しばらく和食から遠のいていた僕は朝方、関西国際空港に着きその足で空港内のバイキング形式の朝食をとりました。

ご飯、味噌汁、サケの塩焼き、なんでもないこの朝ご飯に泣いてしまいました。体に沁みわたるお米とだしの味。改めて日本人なんだと実感しました。

お米を作ろう。

 

3回続けてこちらの農場での体験を書いてきましたが、いったん終わりにして日本でのお米作りのことに話を移したいと思います。ここでのお話はまだまだあるので、現在実践している農業と比較などしつつまた紹介したい次第です。

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最後にここの人たちです。左がいつもいろいろな作業を教えてくれた野菜担当のセドリック。右は就寝を共にしていた研修生のマルコ。

セドリックは30代、マルコは20代・・・2人ともふけ過ぎ。。。

 

 

  次の記事>>種を蒔くということ


2 件のコメント

  • 須賀さんの文章はとってもいいですね.須賀さんの気持ちがスーと相手に伝わってきます.自分の言葉を持てる人なのでしょうね.ブログの写真もシンプルで綺麗です.文章も書くけない,何も心に伝わらないブログやフェイスブックが反乱する中で,須賀さんのような心に響くブログに出会うのは,まだ日本にも須賀さんのような若者がいるんだと日本を信じられる気持ちになります。

    • 遠くフランスからのコメントをありがとうございます。こちらの記事の通りここでの経験が金銭的でない今の豊かな生活の一歩となりました。当時、農場へコンタクトをとっていただいたことに感謝しています。
      物書きの方にほめていただき恐縮ですが、少しずつ投稿していきたいと思います。
      最近、荒井さん著の”パリのカフェごはん”を仲間で読み返していました。
      僕達のような立ち位置の農家が何をしていったら良いか、いいイメージを与えてくれます。
      本はそのまま元料理人の農家にさらわれました。。。
      またいろいろと御教授をよろしくお願いします。

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