これまでの人生において転機となる瞬間は幾度か思い出されますが、生活をがらりと一変させるような経験を僕はフランスの田舎ですることになりました。
前回に続き農業を始めるきっかけとなったノルマンディーの農場での生活を紹介したいと思います。
なだらかな丘陵が広がる農場。昔どこかで見たような景色。これは、ハイジ。アルプスの少女ハイジの世界です。
日本の田舎のように高い山がたくさんそびえ立つこともなく、広葉樹が多いのか自然の緑が浅く、湿度が低く、とても爽やかな気候、風土です。
今思えばここの農場はフランスの一般的な農業とは違いとても特殊なことをしていたのだと思います。
まずはじめに農場を主に運営していたのは個人ではなく、夫婦が3組と独身の男性が1人の共同運営のような形でした。夫婦には小さい子供がいて奥さんは子育て中でしたので旦那さんが主に農作業をしていました。そして研修生が入れ替わりで3、4人同じ敷地で暮らしていました。
その研修生にまざり生活するのですが、その年のフランスは寒波で季節は春の入り口の3月末。まだまだ寒くて凍えていたのですがおや、、、誰も寒そうにしていない。
研修生の若い子2人と石造りの大きな小屋の2階で寝ていましたが、暖房設備がなくベッドに毛布が1枚しかありません。僕は奇跡的に寝袋を持参していたので、完全にそれにくるまりさらに毛布を1枚追加してもらいとあらゆる手を尽くし安眠する方法を考えました。そうでもしないと顔が出ていると痛いのです!
しかし2人の若い子達はベッドに入るやいなやすぐに眠りにつきます。おい早いよ。。。
これは体感温度が違う。。。
むかし北海道から嫁いできた近くの焼き肉屋の奥さんがしばらく京都の暑さに耐えられなかったと話していたことを思い出しました。京都の夏は蒸し暑い。長年住んでいてもたまに億劫になるときがあります。
薄々感づいていたもののこれから数ヶ月、不利だ、これは不利だと思いつつこの完全アウェイな状況で焼き肉屋の奥さんを励みにがんばるのでした。。。
寒いとは言うものの昼間に農作業をすると汗をかくくらいのハードワークです。
でも前回書いたようにシャワーがありません。普段、体は濡れタオルで拭いて頭は水道で軽く流すのみ。
一度お皿を洗っていた時に注意されたことがあります。すすぎ洗いの時に水を出したままだったのがいけなっかたらしく台所用のたらいみたいなものに水を溜めてそこですすげとのこと。
それでは洗剤が溜まっていって綺麗にすすげないよと思いつつ洗っていたのですが、どうも水が十分でなくエコロジックの観点から水をとても大切にしているとのこと。
そう考えるとここではシャワーはもちろん日本のようにお風呂に水をはるなんてことはもってのほかです。山が豊かで水源が多く、地下からお湯が噴き出す日本は本当に恵まれています。
温泉ありがとう。
その流れで当然トイレは水洗ではありません。便座は洋式の座るタイプのものが設置してあるのですが、あきらかに自分で作った感のあるカスタマイズされたトイレでした。
カスタマイズトイレといえばシステムキッチンみたいでかっこいい感じですが、便座の下は少し距離があり大きめのポリバケツが良いたたずまいで置いてあります。そして用を足すごとに麦の藁らしきものをサラサラと落として積んでいきます。これの終着点は畑だということです。まさに昔の肥だめです。
一度だけこのポリバケツを数人で運び出し完全な堆肥にするために置いておく場所に移動させたことがあります。その時「臭くないでしょ?」と1人に聞かれました。確かに臭くない。これには驚きでしたが、ここでの食事が大きく関係していることは容易に想像できました。
おそらく90%以上の食材が自給されているこの農場の食事はどのようなものっだったか思い出してみようと思います。
次回につづく