生きた緑


昔の農家の間では”苗半作”という言葉があったようです。良い苗を育てることができれば半分は成功したようなものだ、もしくは今年の収量の半分は保証されたようなものだという意味です。苗作りがとても重要な行程であることを教えてくれます。

現在の農家の多くは苗を購入して田んぼに植え付けます。しかし僕のような栽培ですと購入した苗では具合が少し悪く、さらに種を蒔く時に薬品で消毒し、田植えの時に薬剤をふりかけますのでスタイルに合いません。なので苗を他から購入するという選択肢はありません。

そもそも苗作りは楽しいですし、稲作の醍醐味の1つです。そして今年も種籾を蒔き終わりました。

ですが毎年芽がでるまではドキドキしています。何かの不具合で発芽しなかったらそこで終わりです。この時期はとてもナイーブになります。ナイーブ。。。

 

種籾は浸種といって20日ほど水に浸けておきます。稲の種籾は15%の水分を吸うと胚の発芽活動が始まります。また発芽抑制物質というものがありそれも除去する効果があります。

 

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一般的な方法より水の温度を低く、日数も長く浸けます。

これには大事な理由があり、僕は催芽器もビニールハウスも使わず畑で苗を育てています。催芽器は種を蒔いた箱を入れて30度に温め一気に発芽させる保温器のようなものです。種用のこたつみたいなものでしょうか。4日ほどでそこから出し、ビニールハウスの中へ移動し田植えまで管理します。

僕の栽培で重要なポイントは植物が自然界で育つ姿をイメージしてそれに近づけることです。

例えばお米が土の上に落ちているとしたら何月のどのタイミングで芽を出し、成長して穂をつけるでしょうか。人の手が加わらなければ雨が何回か降って十分に水を吸ったところで気温の上昇とともに芽を出すことが想像できます。

種を蒔く4月中頃に30度になる日はありませんから、催芽器を使うことで無理に種をたたき起こした感じになってしまいます。これを平均気温が12、3度以上になる4月中頃に自然発芽に近いかたちで芽を出し、外の気温上昇とともに苗を育てる工夫が先ほどの浸種を常温よりも低く管理する理由です。

浸種が終わると水から上げいよいよ種蒔きです。

基本的な発芽の条件は水、温度、酸素ですから、十分に水を吸った今まで寒かった種達は4月の小春日和に一気に起きるのです。

苗は20cmほどの長さがほしいので種まきから40日前後必要となり、この方法で苗作りをすると田植えは5月下旬になります。

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そして今年も無事に発芽し、現在2cm。

光に透けると綺麗な緑。

躍動する生きた緑。

 

次回は土を耕すことについて紹介してみたいと思います。

 

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